第27回ROBO-ONE予選観戦
第27回ROBO-ONEの予選を観戦してきました。
予選はいつも通り4.5メートルの直線コースを歩行するタイムを競う形式でした。ROBO-ONEの規定(PDF)では、リング面には障害物が設置され、あらかじめ詳細が公開されることとなっています。
リング面には起伏や障害物を設置する場合がある。ただし、リング形状とその詳細は、事前に参加者に公開される。
おそらくこの「リング」というのは予選で走行するコースも含むのでしょう。今回は薄いプラスチック板(下敷き)とゴムの板が置かれていました。
前回大会までは地面に固定されたゴムシートで、これは地面が滑りやすいことを積極的に利用して足を地面に擦りながら移動するロボットを牽制する意味があったと思います。もともとROBO-ONEのリングが滑りやすい素材でできているのは、「ちゃんと制御しなくても」二足歩行の格闘競技が成立するようにと配慮したROBO-ONE大会黎明期からの経緯によるものなのです。摩擦のある地面という課題は、ホビーロボットでの運動制御技術の進歩を促す意味でまあ良かったのではないかと思っていました。
一方今回は同じゴムシートでも避けて通過することもできる配置で、しかも固定されていないため蹴って退かしたロボットもいました。そのため、今回はこの点では足を地面に擦りながら移動するロボットにとってもそこまで不利な課題ではなかったように見えました。
そして、もう一つの障害物であるプラスチック板は、技術的にはまた別のものとなっているように見えました。というのも、「ロボットの足の裏と床の間」以外に「床とシートの間」でまた別の滑りを起こすためです。実際、重心の高い姿勢で歩く重量級ロボットを中心に、このプラスチック板で転倒してしまうのが数件見られました。
前回までの課題に対して、一つの正攻法と思われる解決策は、足が滑らないことを前提とした足の運びをし、滑らないように足裏にグリップ材を貼るというものではないかと思います。このような歩き方であれば、もともと滑りを起こさず歩いているために途中でゴムシートがあってもほとんど影響を受けません。人間も普段の歩き方はそうなっているのではないかと思います。
しかしプラスチックシートが地面に固定されずにおかれている場合は、これはたとえロボットの足裏がグリップの良い素材であってもシートがロボットごとリング表面を滑って行ってしまうので「踏ん張り」が利きません。この要素は、足裏に滑り止めを張る等のロボットの機構だけではコントロールできないものとなっています。ここで「踏ん張り」とは、歩行の時に必要とされる足の裏と地面との間の力のうち水平面の成分に相当します。
このような状況では、逆に、踏ん張りを利かせなくてもよい歩き方をすることになるでしょう。足の運びについて、どの瞬間も地面を横にける力が強すぎないという制約がさらに加わる形です。人間でも、氷の上を普通の靴で歩く場合にはどうしても踏ん張りが利かないので、歩き方を巧みに変えることで滑らないように歩きますが、そのようなイメージです。正攻法で今回の予選に置かれた障害物に挑むとすると、これと同じことが求められるのではないかと思います。
以上の観点から、今回は足裏を滑らせないようにしているロボットにとっては一つ課題が増えた形になっていたのではないかと思います。
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